■田中勝己コメント
想い出は記憶の積み重ねだと思います。小さな記憶の断片が繋がってそれそれ、一人一人の想い出になる。僕は、僕以外の誰かの想い出、つまり記憶に想いをはせ、歌う事は大変難しいのですが、自分の想い出、記憶なら歌う事が出来ます。
最終回が訳判らなくなって何処に何を録ったか判らなくて、3倍で記録していたからトラッキングも合わないテレビ番組の録画テープ。同じ時期のβが付く方の奴。2DDと刻印されているけど何を記録してしまったかさっぱり判らなくなり、パソコンのデータなのか、ワープロのデータなのかさえも判らないフロッピー。今聞くと多分、恥ずかしい昔、自分の声を録音したカセット。本体が故障したのに何かを探していると必ず出て来る、主の居なくなったリモコン。出てきた当時は大容量と言われ、結局リプレースされた規格の異なるリムーバブルドライブ。電池が切れて動かなくなった元々パソコンと言われていた大きな部品の塊。そんな物たちが詰め込まれた『箱』が部屋の何処かにある。
何でも入る、あのロボットが装備しているポケットが出来るまでは、大切に取っておくか、記憶と言うメディアに記録する事も選べる。そんな選択をする時に、この曲を想い出して貰えたら、少なくとも、大切な記憶を粗大ゴミにしても平気な方々、自分達が自信を持って世に送り出したのに掌を返した様に旧世代、と消費を促す方々にも聞いて貰えれば、この曲を送り出した意味が有るのかな?と思います。
※田中勝己氏には、さらにこの曲についてのあとがきをご執筆いただきました。「何度か聴いた後に読んでいただきたい」というアーティストの意向を踏まえ、Amusement Center会員(登録無料)のみご覧いただけるコンテンツとしてご提供いたしております。あしからずご了承ください。