梅本竜 RARE TRACKS Vol.3「XENON “THE ORIGIN”」

YM-2203という過酷な条件にも関わらず音響重視AVGに挑戦する

ECLIPSE - THE ALBUM

映画のサウンドトラックとゲーム音楽を、暖かみとソリッドが共存するFM世界で融合させた隠れた名作「XENON」。「DESIRE」と「EVE」に挟まれ知名度は低いが、梅本竜がゲーム音楽作家として確実に生まれ変わった瞬間がそこにある。エミュレータでも再現されていない「幻のYM-3438版」全曲、14年の時を越えた現代版XENON「Tinnitus」、高見龍によるリミックスも合わせて収録!

商品名
XENON “THE ORIGIN”
品番
EMCA-0006
発売日
2008年8月18日
定価
3,143円(税込)/2枚組
在庫
なし

収録楽曲

isc A(YM-2203)

  1. Tinnitus (XENON overture)
  2. Desertstorm
  3. Dream
  4. Realize
  5. Ranphar 1
  6. Encoder
  7. Access
  8. Moonlight
  9. Memory
  10. Contact
  11. 7th
  12. Risk
  13. Magenta
  14. Synaps
  15. Fact
  16. Past
  17. Xenon
  18. Ranphar 2
  19. Magnify
  20. The pirate
  21. Reamer

Disc B(YM-3438)

  1. Desertstorm
  2. Dream
  3. Realize
  4. Ranphar 1
  5. Encoder
  6. Access
  7. Moonlight
  8. Memory
  9. Contact
  10. 7th
  11. Risk
  12. Magenta
  13. Synaps
  14. Fact
  15. Past
  16. Xenon
  17. Ranphar 2
  18. Magnify
  19. The pirate
  20. Reamer
  21. SRAM (BonusTrack)
  22. DRAM (BonusTrack)

BONUS TRACK

  1. Tinnitus : Ryu Umemoto
  2. SRAM & DRAM : Ryu Takami

作品紹介

本当のXENON

本当のXENON

「Desire」においてマルチサイトAVGを成功させ、次なる高みに昇り始めた菅野/梅本両氏は、YM-2203という過酷な条件にも関わらず音響重視AVGに挑戦する。

開発期間二ヶ月。限りなく短い時間で完成度をどこまで高められるか……という問いに対して梅本は「映画サントラとゲーム音楽のクロスオーバー」という形で解答を出す。氏曰く、「本当に難しかったのは、効果音に1チャネル専有されたままの状態で曲を設計しなければならなかった」部分だという。当時、スーパーファミコンがADPCM8音同時再生という時勢の中、FM3音+PSG3音で、しかもFM1音を封印されながら、どのようにしてその高い目標をクリアしたのか。

本サントラの「YM-2203版」から、その答えを聴きとってほしい。そして、今やなんでも揃っているサウンドエミュレーターですら再現されていない超レア音源「YM-3438版」では、ADPCMをふんだんに使った「本当のXENON」を垣間見ることが出来るだろう。

Flectere si nequeo superos, Acheronta movebo

Flectere si nequeo superos, Acheronta movebo

「もし天の神々を動かしあたわざれば、冥界を動かさん」。

イントロはフロイトの一節、本編は精神科医のカウンセリングらしき場面から始まり、非現実的な夢と精神科医の夢判断を繰り返す内に現実感は薄れて行く。そして、まるでSF映画のクライマックスのような「オープニング」を迎えることになる……

まだ情報収集をインターネットなどに頼れないそんな時代から、膨大な情報を的確に収集し、それを物語として纏め上げ、驚異的なハンドスピードで作品に仕上げていった菅野氏。矢継ぎ早に出来上がってくるダミー画面を見ながら作曲でき、しかも提案した演出はすべて採用されるという好環境に置かれ、音楽のみならず演出においても意欲的な仕掛けづくりをしていく梅本氏。たとえ開発期間が短くとも、この両氏の組み合わせにおいて失敗は考えられない。

うなりをあげるエンジン音のようなベース。絹糸のように繊細で艶やかなベル。

美少女ゲーム史上において、これだけのダイナミックレンジを誇り、かつここまで巧妙に設計されたゲームは、PCM世代を含めたとしても中々類を見ないだろう。ましてFM音源時代だけに絞ればなおさらのこと。伝説は「YU-NO」だけに留まらない。

Tinnitus (XENON overture)

Tinnitus (XENON overture)

今回のCDは、ボーナストラックから始まるというちょっと珍しい構成をとっている。

同時発売の「DESIRE The Origin」にも見られる、彼特有の「仕掛け」である。

原作を覚えている方であればかなり驚愕の仕掛けとなるに違いない。FMと現代的シンセサイザーの融合系を得意とする梅本ならではの技で、記憶と現実が錯綜する事になるだろう。まさに「XENON」の胆である「夢なのか、現実なのか」をそのまま形にした楽曲である。言葉では説明しきれないその感覚を、是非ご自身の耳で確認してほしい。

DiscBの最後には、彼の盟友である高見龍のリミックス(「SRAM」「DRAM」)も収録されている。梅本/高見のコンビは「EVE Burst Error」が最初だが、EVEの中で1、2を争う人気曲「ハッキングシーン」そのままのノリで「XENON」のダイナミクスを極端にブースト、迫力満点に飽和させている。こちらも見逃せない逸品だ。

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