
2025/10/30 配信
刑事J.B.ハロルドシリーズ第三弾はなんと『マンハッタン・レクイエム』のパラレルストーリー! 推理コマンドを駆使して事件を解決しよう。
「キャサリン、何を笑っているんだ! 大体そんな気の抜けたことだから、J・Bみたいに勝手なことをするやつが出てくるんだ」
テイラー部長は、J.Bが残した休暇届を床に投げ捨て、拳で机をドンと叩いた。
「いいか、諸君! そもそも我々警察官は、市民から信頼され、愛される警察として、日夜たゆまぬ努力とその責任を……」
とうとう、お得意の演説が始まってしまった。その場に居合わせた刑事部屋の連中は、いつものことながら、それを聞くふりをして、机に向かって仕事を始めた。テイラー部長の熱弁は、当分おわりそうもなかった。キャサリンは、足元に落ちていた紙きれをこっそりと拾った。そして、くしゃくゃになった休暇届をそっと広げて、それを読みながら、ため息まじりに小さな声でつぶやいた。
「マンハッタンか……」
窓のガラスに、白い雪がついては消えていった。それは、その年、リバティ・タウンに初めて降った雪だった。
本作は1987年にリバーヒルソフトから発売されたアドベンチャーゲームで、『殺人倶楽部』(1986年)、『マンハッタン・レクイエム』(1987年)に続く刑事J.B.ハロルドシリーズ第三弾にあたるタイトルです。もっとも、本作のタイトル画面にある「another story of MANHATTAN REQUIEM」という表記からもわかるように、ナンバーシリーズではなく、第二作『マンハッタン・レクイエム』のパラレルストーリーにあたる作品です。
物語は宝石店から奪われたサファイア「青い嘆き」の盗難事件を中心に、複雑な人間関係と推理が展開されます。今回注目いただきたいのは、刑事J.B.ハロルドシリーズ初の「推理」コマンドです。前作まではコマンドの総当たりで攻略することも可能でしたが、本作ではこれを上手く使わないと攻略できない仕組みになっています。そういう意味では、ワンランク上の推理アドベンチャーが楽しめると言えるでしょう。
また、当時の歴史を振り返ると、本作には面白い試みがなされていました。というのも、『キス・オブ・マーダー 殺意の接吻』は、『マンハッタン・レクイエム』から画像データを読み込んで遊ぶ形式だったため、プレイには『マンハッタン・レクイエム』が必要だったのです。真相は定かではありませんが、「外伝なのだから、購入するのは前作を持つファンに違いない。ならば、前作からデータを読み込むことで低価格で発売しよう!」といった意図があったと言われています。