佐藤辰男、コンプティーク編集長時代を語る!

『コンプティーク』と『コロコロコミック』

hally
『コンプティーク』のキャッチコピーは、「戦うパソコンゲームマガジン」。よく「何と戦ってるんだ?」なんて言われていましたが……。
佐藤
なんだろうね(笑)。覚えてないね。
hally
写真ゲームに対する野心的な姿勢を現しているのかな、なんて勝手に思っていました。ゲーム雑誌としてみた場合、『コンプティーク』は「福袋」(過激な内容で知られた同誌特有の袋とじページ)のような裏路線にも力を入れつつ、正統派の攻略記事も充実させていて。全体として、よくバランスが取られていたように思います。

個人的には1980年代半ば、「福袋」の中心がファミコンの裏技だった時期が、一番センセーショナルだったかなあと……。『ゼビウス』の無敵技が掲載された号で、『コンプティーク』の知名度は一気に上がったと思うんですが、あれをはじめとして、技術解析に基づいた高度な裏技を紹介しておられましたよね。他のファミコン専門誌ではありえないものだったわけですが、佐藤さんは編集長として、当時どれぐらい深いとこまで突っ込んでもよいと考えておられたのでしょうか。
佐藤
『コンプティーク』創刊前になりますが、『コロコロコミック』(小学館)の編集部へ教えを請いに行った時があったんです。ちょうど「チョロQ」が流行ってて、車輪の色やギア変更などチョロQの改造にメディアとして『コロコロ』編集部が関わっていた時期ですね。バグ技とかが出てきたときに、(それを素材に)雑誌側から仕掛けるのもアリだなと思った記憶があります。

『ゼビウス』のバグ技も読者から手紙が来て、非常に悩みました。「メーカー怒るよね。でも、読者絶対喜ぶよ」と。そして実際メーカーには叱られた。何度も謝りに通いましたよ。そうするとだんだん向こうの態度が変わってきて「いやー実は最近、売れているんですよ」となってきた。
hally
だいたい同じぐらいの時期に、『コロコロコミック』でも欄外に裏技記事が掲載されていましたよね。
佐藤
ええ、だから当時『コロコロコミック』や『少年ジャンプ』をものすごく勉強しましたよ。
hally
もうひとつ、佐藤さん時代の『コンプティーク』といえば、アイドルを前面に押し出していたのが、とても象徴的だったと思います。
佐藤
これは当時『ザ テレビジョン』の編集長だった人が「本屋さんに行くと、笑いかけて読者と目線が合う雑誌が親しみを与えるもんだから、女の子が一番いいんだよ」と言ったところからスタートしています(編注:『コンプティーク』は『ザテレビジョン』別冊として創刊)。言われてみればそうかもしれない、と。でもみんなは「パソコン雑誌でアイドルというのは、いかがなものか」と言ってたんですけどね。
hally
記事的には、女の子のデータベースをBASICで作らせてみたりとか、わりと無理やりなところもありましたけど、今から思えば、あれはあれで味わいでした。

表の顔がアイドルの笑顔だったとすれば、『コンプティーク』の裏看板ともいえたのが、故・中野豪さんのイラスト&四コマではないでしょうか。誌面のあちこちに登場する中野さんの絵は、一見とてもアナクロでありながら、最先端のパソコン事情をとてもシニカルに描いていて、ふたりとない作風でした。
『大江戸裏ワールド』中野豪

出典:『大江戸裏ワールド』中野豪 月刊コンプティーク 1992年4月号 263ページより

hally
隠れキャラブームの全盛期に、「隠れサトウ」という企画が密かに盛り上がりましたね。誌面のどこかに佐藤さんの似顔絵が隠されて、それを読者に探させるという……。あれも中野さんの絵があればこそでしたよね。
佐藤
詳しいねえ。でも本人は、恥ずかしいだけですよ。年齢に合わせて、似顔絵イラストに皺まで増やされちゃって困ったというか……(笑)。