アステカ

ファルコムAVGの代表作

 “欧州絵画調電子冒険小説第二弾”として、AVG『アステカ』が発売されたのは1985年2月のこと。第一弾の『デーモンズリング』から数えて約一年後であり、ちなみに'85年といえば、同社からは『イース』と並ぶ名作RPG『ザナドゥ』が発売された年でもある。

  日本ファルコムといえば、今では “イース”シリーズ、“英雄伝説”シリーズが看板タイトルであり、ファンタジー的な世界観によるRPGを得意とするメーカーとのイメージが強い。だが、'80年代に遡れば、『デーモンズリング』『アステカ』のようなAVGも多数発売していたのだ。ここでは『アステカ』にスポットをあてて、日本ファルコムのAVGの魅力について紹介していこう。

 巨大な神殿を築くほどの力を持ち、莫大な財宝と輝く黄金に満たされた中南米に栄えた巨石文明に興味を持つ『私』は、彼らが高度な何かを知っており、それを明らかにする鍵をあちこちに隠したと考えていた。幸いにも遺跡の発掘が始まったとの噂を聞いた『私』は、一路メキシコのパレンケの遺跡へと向かうのだった……。

  『アステカ』は、ダークファンタジー的世界を舞台としていた前作とはがらりと趣向が変わり、舞台はかつてマヤ、アステカ、インカ文明が栄えた地、現代のメキシコをテーマにしたAVGである。主人公である『私』は、そこでトレジャーハンターの“インディ・ジョーンズ”よろしく、秘境冒険の世界へと身を投じていくことになるのだ。これは余談だが物語の舞台となるパレンケ遺跡は、実はアステカ文明ではなくマヤ文明の古代都市遺跡として有名である。

パワーアップした描画能力&大人のAVG!?

 当時のAVGは、現在のようなコマンド選択方式はなく、“トル”、“カウ”などと入力するテキスト入力方式がスタンダードだった。おまけに当時はカナ入力が主流だったので、当時のゲーマーの中にはAVGによってカナ入力が鍛えられ、今でもテキストはカナ入力という人も多かったりもする。さて話を戻そう。本作でもテキスト入力方式を採用しているが、ローマ字入力に対応していた点は(当時としては)目新しかったほか、“,(カンマ)”で区切ることで、複数の入力が可能となる連続入力をサポートしていたことも特筆すべき点。今までは1センテンス単位でしか入力できなかった行動が連続して行えるというのは、実に斬新なアイディアだったのだ。ほかにも、画面にいくつものウィンドウが重なっていくマルチウィンドウタイプの表示方法の採用や、前の画面に戻ることで辿ってきた道筋を確認できる回想システムというユニークな試みも施されていた。もちろん『デーモンズリング』同様、“驚異の瞬間画面出力”も健在。PC-8801版『アステカ』のパッケージを見れば“前作『デーモンズリング』より30%増しのスピードアップ”と書いてあり、このコピーに衝撃を受けたファンも多かったに違いない。

  こうしたシステムのお陰で、前作以上にプレイアビリティが増し、当時としては実に快適なプレイが楽しめたのである。

 また本作の大きな魅力の一つに、独特な雰囲気のグラフィックスがある。遺跡の全容や彫刻、さらに女性のグラフィックスなどは写真をそのまま画面にデジタイズしたものが表示され、リアルさと表現の細やかさといったヴィジュアル面についても前作を遥かに凌ぐデキとなっていた。確かに、ここに掲載しているグラフィックスは、今となってはそれほど感銘を受けるようなものではないが、当時はこれだけで感嘆させられたファンも多く、もちろん筆者もその一人。'85年にリリースされた国産AVGの中で、システム、ビジュアル共に本作が最先端を走っていたといっても過言ではないだろう。

 最後にAVGという特性上、ストーリーについては割愛するが、舞台はパレンケの町と遺跡の二部構成で、物語は『アステカ2−太陽の神殿−』へと続いていく。機会があるなら両作品をを通しでプレイしてもらいたい。

Text by 静川龍宗

パレンケの町。マルチウィンドウタイプで画面表示がされている。

ホテルの室内。よく見ると今後の手がかりに気がつくだろう。

新聞を見ると、デジタイズで表示されたリアルな画像が見られる。

道具屋の店内。いかにも探検に役立ちそうな道具が売られている。

迫力のある占い師。占ってもらえるのか? それとも別の何かが?

表紙のアメリカ大統領が時代を感じさせる週刊誌。さぁ、めくれ!

愁いを帯びた女性との邂逅。どこかで見た顔のような……。

パレンケ遺跡の入り口。デジタイズによりリアルに描かれている。

パレンケ遺跡内の彫刻。今にも襲いかかってきそうな迫力だ。

古代アステカの太陽の石。空ろな双眸がじっとこちらを見ている。


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