ザナドゥ

ザナドゥ

国産PCタイトルで、前人未到の40万本達成!

1985年に日本ファルコムよりリリースされた、アクションRPG『ザナドゥ』は、サブタイトルに“Dragon Slayer II”と付いていたことからも分かるように、前年に発売された『ドラゴンスレイヤー』の続編である。ちなみに“ザナドゥ”という語は、英国のロマン派詩人サミュエル・テイラー・コールリッジが、『クーブラ・カーン』(忽必烈汗)で謳った理想郷の名であることは、ちょっとした日本ファルコムファンであれば知っていることだろう。

折りしも、8bitパソコンゲームが最盛期にさしかかろうとしていた80年代の中頃、BPSの『ブラックオニキス』やT&E SOFTの『ハイドライド』など、人気作品の続編がユーザー間で何かと話題を集めていた。そうした中、御三家と呼ばれていた88、FM、X1のメインストリームだけでなく、MSXやPC-9801など多くのプラットフォームに向けて発売されたのだ。当時はフロッピーディスクという新しい記録媒体の普及もあって、扱えるデータ量と、読み込み速度が飛躍的に向上した時期でもある。

こうした事情も手伝って、本作では大規模かつ高密度のゲーム世界を実現。トレーニンググラウンドを加えると11層からなる広大な地下迷宮や、90種類に及ぶ個性豊かなモンスター、プレイヤーの操る主人公キャラクターだけでも392種類のキャラクターパターンを有し、装備を変更すると画面上のキャラクターグラフィックスも同様に変化するといった具合で、当時のPCゲーマーはド肝を抜かれてしまったのである。『ザナドゥ』は、瞬く間にゲームユーザーの支持を集め、発売後1年で実に40万本という史上空前の売上本数を記録し、1980年代の最高傑作という評価を得たのである。

キングドラゴンと王冠を求めて

『ザナドゥ』のゲームシステムは非常にシンプルにまとまっている。プレイヤーの最終勝利条件はひとつ。地下迷宮の奥深くに潜むキングドラゴン、ガルシスを倒すことである。ガルシスを倒すには、“ザナドゥ統治者の証”である4つの王冠を探し出さなければならない。プレイヤーキャラクターはフィールド上を移動し、剣や魔法でモンスターを倒して経験値やお金、食糧、アイテムを稼ぎながら王冠を探し回るのだ。

プレイキャラは戦士と魔法使いの二種類の経験値を持っており、モンスターを剣で倒すか、魔法で倒すかで戦士にも魔法使いにも育成できたり、武器、防具、魔法には熟練度が設定されていて、使い込むほどに、それらの能力が強くなっていったりしたのは、実に斬新なアイディアだった。しかも登場するモンスター数が有限だったために、わざとモンスターを残しておいて、後々入手できる武器の育成に使うなど、マネジメント的な楽しみ方もあったのだ。モンスターの数やアイテムの配置など、ゲーム全般に渡って、これ以上難易度をあげるとクリア不可能、これ以上難易度を落とすと面白味を損なってしまうというギリギリのところで平衡を保つ絶妙のゲームバランスも、この作品の魅力のひとつであり、『ザナドゥ』の人気が単に圧倒的なデータ量に裏打ちされたこけおどしではないことを示していた。

また冒険の中で、プレイヤーはフィールドにそびえる塔の奥で5種のボスモンスターと対決することになる。ボスとプレイヤーが戦う空間は闘技場めいた場所になっていて、主人公の10数倍はあろうかという巨大なボスモンスターが迫り来る様に、プレイヤーは戦慄したものだ。おまけにこの闘技場は入る直前で自動的にキャラクターがセーブされ、勝利しない限りは生きて脱出することは不可能だった。

『ザナドゥ』が前作から引き継いだのは、一部の敵キャラクターを除けばこの王冠の設定ぐらいだが、日本ファルコムの監修のもと発売されていた何冊かの書籍において、作品間のストーリー上の繋がりが示されていたので、ここで触れておこう。

かつて、三頭の暗黒竜ビオラインがクォーリー王国を襲った。この悪竜はかつて王国に君臨した暴君ビオング・ドゥ・ラインの怨念が時を経て竜の形を得たもので。激しい戦いと数多の犠牲の果てに、王国の近衛隊長の息子である一人の戦士に倒された。これが前作『ドラゴンスレイヤー』で描かれた物語で、この時、竜殺しの戦士の手に握られていたのが『ザナドゥ』にも登場する宝剣ドラゴンスレイヤーである。なお、ザナドゥ王国を興したクーブラ・カーンはビオラインを倒した戦士、即ち前作の主人公の転生した姿だとされている。

家庭用ゲーム機や携帯電話など、数多くのプラットフォームに幾度となく移植され、リメイクされ続けている『ザナドゥ』。発売から20年が経過した今もなお、『ザナドゥ』の衝撃は色褪せていない。

『ザナドゥ』はドラゴンスレイヤーシリーズの第2作目だが、後に発売されたシナリオIIや、『リバイバルザナドゥ』、そして20周年を記念して発売された『ザナドゥネクスト』などの後続作品により『ザナドゥ』シリーズが形成されている。これらの作品のいくつかはProjectEGGで順次配信予定だ。

Text by 森瀬 繚(2011.06.04 掲載)

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