1993年……ほとんど完成の域に達していながら、発売には至らなかった、一本のアーケード・ゲームがあった。ウエストン (現ウエストン・ビット・エンタテイメント) が手がけた最後の業務用作品『時計じかけのアクワリオ』である。いまや基板やソースコードはおろか、画面写真さえも残っていない、まさしく幻の逸品。しかし音楽担当者の手元には、当時基板から録音したサウンドトラックのDATテープが残されていたのである。その全楽曲がオンライン・アルバムとなって、13年の時を経た今、ついに陽の目をみる……。
当時のグラフィック・デザイナーによる描き下ろしジャケット画像(左)、作曲者自らが語る『アクワリオ』サウンドトラック製作秘話、そして3名のコンポーザーによる新解釈のリミックス・バージョン……これらと併せて、埋もれた名曲たちを堪能してほしい。
ゲームミュージックにハウス/アシッドジャズの手法を持ち込むという、ウエストンとしては異色の作風に注目してほしい。クラブ・ムーブメントを消化した『モンスターレア』ともいうべきその音は、坂本慎一サウンドの知られざる到達点としても興味深いものだろう。こういった手法は今でこそありふれているが、当時はゲームミュージック全体を見渡しても珍しいものであった。そのことを踏まえて聴けば、さらに味わいが増すはずだ。 ゲームミュージックとクラブミュージックのクロスオーバーは、今日でも多方面で試みられている訳だが、現在のそれと過去のそれを対比してみるのも面白いのではないだろうか?そんな狙いから、それぞれ立場の異なるクロスオーバー志向のミュージシャン3名に、コンテンポラリな『アクワリオ』解釈を試みてもらった。Shogun,USK,Blasterheadらの手で、よりアップリフティングに生まれ変わった楽曲たちに、世代を超えた思いを感じ取ってほしい。 |